前の会社から来た手紙を無視してみた 前編
※ このエントリはすべて架空のもので、現実の個人、会社、団体とは一切関係ありません。

昔からの友達でエンジニア仲間のA氏から、何かと相談と言う名の愚痴を
こぼされることが多い。大体嫁とケンカしたって話が多く、
内容はと言えば自分にとっては取るに足らない内容のことがばかりだ。

まったく、あれだけの才色兼備のお嬢さんを娶っておきながら、なんて贅沢なヤツだと
内心思いつつ話を聞くことが多かったのだが、先日の相談はちょっと話が違った。

なあ、前の会社からこんなものが送られてきたんだけど、お前ならどうする?

A氏が手にしていたのは、こんな文面の書類であった。

   機密および個人情報の守秘に関する誓約書

私、______ は

過去の業務の遂行に関し、次の機密および
個人情報守秘に関する事項を遵守したこと誓約します。


いやいや、個人情報云々ゆってる会社が、
10年も前に辞めた社員の個人情報握ってるっていったいどんな冗談だよw


と返した書類の一番最後には、こんな脅し文句も入っていた。

万一、上記事項のいずれかに反したことにより、会社に損害を与えた場合には、
その責めに応じかつ賠償を請求されたとしても異議の申立をせず、
その請求に応じます


これを12月中旬までに送り返せとか言ってんだよなぁ!

こんなん、ハッタリのタダの決まり文句に決まってんだろ~♪ 無視無視!

そーだよな!やっぱり面倒だから無視すんわ!こんなん!

相変わらずの豪快なやりとりでその日は終えることとなった。
そして、締切日までは前の会社と思しき番号から架電記録と SMS が大量に来た
らしいが、当然それもすべて無視したとのことだった。

そして、締め切り日を過ぎて1週間後の土曜日。A私宅に現れたのは...

ピンポーン。こんにちは! Aさん。お久しぶりです。株式会社〇〇〇ーの××です。

あれ?ポコじゃん?久しぶり! 一体どうしたって言うんだよ。

とドアを開けてみると、ポコと呼んだ嘗て後輩だった男は、
もう一人銀縁眼鏡の貧相だが身なりの良い男を引き連れていた。

初めまして。Aさん。私、弁護士の△△と言います。
この度は個人情報守秘義務の件でお伺いさせて頂いております。


同じく名刺を差し出してきたポコは、なんと前の会社の役員にまで上り詰めていた。

なんだポコすごいじゃーんw で何? スカウトにでも来たの?

もうそうゆう呼び方止めてくれませんかね! 昔っから嫌だったんですよ全く!

思わず アァ? と凄むA氏であるが、すかさず弁護士から

立ち話ではなんですから、ちょっと移動しませんかね?

と、提案されたので、A氏も何か嫌な空気を感じて、大人しく従うことにした。
そして近所の喫茶店まで移動したA氏とそのご一行。
注文を取ると、初手から弁護士より本題を切り出された。


Aさん。この間お送りした個人情報の誓約書、なぜご返送頂けなかったのでしょうか。

いやいや、あんな一方的なことが書いてある文章。
はいそうですかって送り返せるわけねーだろ!


実は当時の皆さん全員からご返送頂きまして、
Aさんだけなんですよね、ご返送頂けてないの。
なんかご返送頂けないことに心当たりでもあるんでしょうかねぇ?


ええ?そんなんあるわけと反論しようとしたところをポコが遮って

Aさん。このログ見覚えないですかね。
この、みかか社向けに作ってたSO管理システムのログ。


A氏はハッと過去のプロジェクトを思い返し、
確かコイツとはこのSO管理システムで一緒に仕事をしていたことを思い出した。

で、実際に商用のDBに繋いで少々顧客情報を引き出してたヤツが
居たみたいなんです。ほら、このIDのコイツ。
で、このIDの持ち主。この書類みるとAさんなんですよねw


バカ言ってんじゃねえ!と声を張り上げても二人ともたじろがない。
むしろ周囲には、丸め込まれつつあるA氏の逆切れ加減が伝わっただけであった。

ポコお前忘れたとは言わさねえぞ!あの時の元受けの、みいそ社の連中から

おまえらどうせ(偽装)請負なんだから商用繋げるIDは1個なw
もう、取るの面倒なんだから1つでいいよなw

ってバカにされて、当時PLだった俺の名前でしか貰えなかったことを!

いやあ、そんなん全然覚えてないんですよね~。
それより、この証拠とAさんが押したハンコが偽物だとでも言うんですか?


ぐぬぬ...とA氏が押し黙ったところで弁護士から。

つきましては、この件で漏洩した顧客情報は最大でも 23件と少なかったのですが
管理体制を問われた みいそ社は2年の入札停止をみかか社から言い渡され
下請けの〇〇〇ーさんところも、そのあおりで受注が無くなり、
大変な損害が生じておりまして...


ぐっと生唾を飲み込み、背筋に冷たいものが走るA氏...

この個人情報を漏洩させた犯人には、
この程度の賠償請求訴訟を起こす予定となっておりまして...


そうして示された書面には、一億六千万円の数字が書かれていた。

Aさーん。まったくトンデモないことしでかしてくれましたよね~w
ホントと俺ら、これが発覚した時に大変な思いしたんっすよ~w


と、調子にノリ始めるポコにイラつくのも手伝ってか

だからっ! テメェお前俺がそんなことするとでも思ってんのかよ!

と、ポコに殴り掛かりそうになるA氏を弁護士が制止し、

あなた、不正競争防止法違反だけじゃなくて、傷害罪でも起訴されますよ?

呆然として椅子に腰掛け直すA氏。畳み掛けるように弁護士は...

いやあまあ、そうは言ってもですね、こちらとしても落ち度が無かったわけでも
無いですし、もしAさんがこの金額で我々と合意して頂けるのであれば
我々は不正競争防止法違反での告訴はしないつもりなんですが、如何ですかね?


そうして見せてきた紙には、5割引きの八千万円と書かれていた。

だからぁ...俺そんなことしてないって言ってるのに
そんなカネ払わなくっちゃ行けない訳?


いや、Aさんがお気に召さないようであれば、
我々は先ほどの証拠と共にこのまま警察に行くだけですけどねぇ。
まさか警察の取調べでその言い分が通るともお思いで?


さすがに不利を悟ったA氏。
携帯電話で奥様に助けを求めるべく電話を掛けようとすると

えー? Aさんこんくらいの話一人じゃ決めらんないんっすか~w

と、ポコにバカにされただけではなく、
どうせ、電話しても毎日ケンカばかりしているし、
これ幸いとそのまま離婚を言い渡されるのがオチさ

との心情も手伝ってか、A氏はそのまま発信を止めた。

どうでしょうか。Aさん。どうなさいますか?

わかりました...その内容で合意します...

そうしてA氏は、その後また別のビルの小さな一室に連れて行かれ、
弁護士が用意していた自分の名字のハンコをいくつか押した後に解放されたが
その時の様子はショックでよく思い出すことができない...

それから4日後。あれだけの膨大な額のおカネ。一体どうやって払えばいいのか?
と、A氏が悶々とアタマを抱えているとき、A氏の家に1枚の紙が送られてきていた。

その紙には...


  債権差押命令



と、書かれていた。

※エントリが長くなってので続く
【2017/04/01】 その他 | トラックバック(-) | コメント(-) | page top↑
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